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夜風が長いプラチナブロンドとトレンチコートの裾を揺らし、ピンヒールの音は静かな街に冷たい音色を奏でていた。
エミリアの住む高級住宅街は都心に近いながらも閑静な場所に位置している。
こんな時に泊めてくれるような友人も少なく、仕事仲間に迷惑をかけたくないエミリアは1人寂しく王都中心街へ向かっていた。
しかもこんな時間、タクシーどころか車の1台も通りはしない。
送迎のオリバーもとっくに帰宅しているだろう。
暫くすると向こう側から酔っ払った若いカップルがいちゃつきながら歩いて来る。
「ダーリンだいちゅき~」
「僕もだよ~」
外では常にサングラスと帽子をかぶっているエミリアだったがそんな彼女に気付く事もなく、見向きもされずに通り過ぎていった。
(家でやりなさいよ!)
エミリアは心の中で毒気づいた後、えもいわれぬ肌寒さに肩を小さく震わせた。
「ほんと最悪………」
(明日から思い切り羽を伸ばすんだから……)
そう、心に誓ってーーー。
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