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酒に酔った時と似た高揚感が、体の奥からわき上がるのを感じる。
全身が熱を持ち、足に上手く力が入らず立つことすら難しい。
全ての感覚が鈍る中、彼の手の冷たさだけがハッキリしていた。
上手く頭が回らないが、今の自分が異常であるということだけは辛うじて理解する。
本能的に彼の手を振り払い、よろめきながらも後退して距離をとる。
その途端、脳はすぐに覚醒し、高揚感も引いた。
「どうかしたのか?」
レオンは差し出した手を下ろし、首を傾げる。
その様子からして、今のは彼が私に何か魔法をかけたから、という訳ではないらしい。
「いや……静電気がおきて、驚いたんです」
「そうなのか。最近、乾燥しているからな」
私の下手な言い訳を、彼は疑いもせずそのまま受け取ったようだった。
どうやら、かなり素直な人らしい。
……顔の造形の美しさに気をとられて気付かなかったのだが、彼の顔には表情というものが抜け落ちている気がする。
完全に無表情だ。
その完璧過ぎる容姿も相まって、まるで人形のように感じる。
「それでは、案内しよう。後ろから着いてきてくれ」
くるりと私に背を向けて、先の見えない廊下を歩き始める彼。
くだらない思考を頭から追い出して、彼の後に続き私も歩き始めた。
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