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発光が収まり、移動の完了を告げる。
涼やかな風が、私の髪を揺らした――どうやらここは、外のようだ。
「ここが特別寮だ。今日から君の家になる」
その声で顔を上げると、そこには立派な洋館が建っていた。
白い壁に鮮やかな赤色の屋根。絵本から飛び出してきたような外観だ。
「俺もはじめは戸惑ったが、直ぐに慣れるから」
彼は魔法陣から出て、扉の前に立ち銀色のドアノブに手をかける。
その後を追い、私も扉の前に立った。
ゆっくりと開かれる扉。
その瞬間、何やら甘ったるい香りが鼻をかすめる。
「あらァン! レオンちゃん、もう戻ったの?」
――どうか、想像してみてほしい。
開けた扉の先に、とても立派な筋肉を持つ男の人が、ピンクのフリフリエプロンを着て、ショートケーキがのった皿を持っていたら。
誰だって、私のように、驚きで固まってしまうだろう。
「あら? 後ろの子は……」
サングラスをかけた厳つい顔が、此方に向けられる。
「もしかして、レオンちゃんの彼女!?」
「そんなわけないだろう」
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