22人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女――キャサリンはその言葉で振り返る。
「テーブルに置いてくれるかしら。……さ、おいでなさいな」
彼女はくねくねと体を揺らす独特の歩き方をしながら、テーブルの元へ行く。
そのテーブルに椅子は三つあった。その内の一つを彼女に勧められ、私は素直に座る。
隣りにはレオンが座っていて、切り分けられるケーキを目を輝かせながら見ていた。
先ほどまでのクールで落ち着いた雰囲気はどこへやら。
――ま、私はこっちの方が人間っぽくて好感が持てるけど。
「さ、どうぞ」
皿の上にのせられたショートケーキ。
たっぷりのクリームに熟れた苺がちょこんと乗っているその様子が、なんだが少し可愛いらしい。
「いただきます」
レオンは手を合わせてそう言った後、フォークを持ってショートケーキにかぶりついた。
――正直、私はショートケーキなどの甘いものはあまり好きではない方だ。
しかし、断るのも悪いのでいただくことにする。
フォークを持って、のろのろとショートケーキの欠片を口に運ぶ。
ぱくりと口の中に入れた瞬間、私は思わず目を見開いた。
「美味しい……!」
クリームの甘さと苺の甘酸っぱさが、ほどよくマッチしている。
スポンジもふわふわだし……失礼な話だが、グランさんが今までくれたどのケーキよりも美味しかった。
最初のコメントを投稿しよう!