01 赤瞳の少年と私

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「気に入ってくれたみたいで、よかったわ」  ルージュがひかれた口元がきゅっとつりあがり、黒いサングラスで隠れた目元が優しくなったのが気配でわかった。 ……見た目のインパクトはキツイけれど、本当はいい人なのかもしれない。 「おかわり」  そんなことを考えていると、隣から静かに次のケーキを要求する声が聞こえた。 見ると、ケーキは皿の上に欠片も存在していない。  私はまだ一口しか食べてないのだが……いくら好物であっても食べるのがはやすぎないか。 「食べ過ぎると、太るわよ」  呆れたように言いながら、ケーキを切るキャサリン。 「食べた分は、運動して消費するから大丈夫だ」  彼は紅茶を飲みながらしれっと言い、ケーキがのせられた皿を引き寄せる。 するとこちらの視線に気づいたのか、彼は私の顔と皿を交互に見て言った。 「食べないなら、貰うぞ」  それが親切心からの言葉か、ただ単純に食べたいだけかは分からない。 だが、彼の瞳に本気の色を感じた私は、慌てて自分の皿と向き合い、食べるのを再開した。 「そんなに慌てて食べなくても大丈夫よ、ルナちゃん。ケーキはまだあるから」  そういう意味ではないのだが、ここは素直にお言葉に甘えさせてもらうとしよう。 口の中にひろがる心地よい甘味が、癖になりそうだ。 「おかわり」  驚いて彼の皿を見ると、またもやケーキの姿はなかった。 ちなみに、私のケーキはやっと今半分まできたところである。 皿の上に小規模なブラックホールでも発生しているのだろうか。 「……少しは自粛しなさい」  溜息をつきながらキャサリンにそういわれ、(表情は変わらないが)しゅんとするレオン。 どっかの師匠とはちがって可愛げがあるので、思わず同情してしまう。 「私は全然構わないので、もう一つ差し上げてください」 「あら、そう? ……なら、もう一個だけね」
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