01 赤瞳の少年と私

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  「ありがとう」  レオンはケーキがのった皿をキャサリンから受け取り、助け舟を出した私に微笑みかけた――というか、微笑もうとしたのだろう。 残念ながら彼の口元が二、三回痙攣しただけで笑顔にはならなかった。 顔の筋肉が固いというか、まあ、そういう病気を抱えているかもしれない。 「いえ、気にしないで下さい」  二つの意味を込めて言葉を返し、ケーキを味わう。 「……あ、そういえば、レオンちゃん。もう【魔物討伐隊】の集合時間じゃない?」  キャサリンが、壁に掛けられた時計を眺めながら言う。 因みに時刻は午後6時。 「ああ、そうだな」  さらりと言うレオンに、キャサリンは眉間に皺を寄せた。 「またガブリエルちゃんに怒られちゃうわよぅ」 「それは避けたい」  既に空になった皿をにフォークを置き、彼は椅子から立ち上がる。 「すまんな、今から仕事なんだ。校舎や店の案内は、キャサリンに頼んである」 「分かりました。……というか、忙しいのに、ここまで案内してもらってすいません」
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