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「しかも、どうして、よりによって、いっぱい稼いできた時に」
私は家が“あった”場所を指し示す。
「全壊させてんだ」
木造の為か、勢い良く燃え上がっている家“だった”もの。
柱が折れ、屋根が落ち、壁は跡形もなく崩壊している。
町外れに存在し、燃え移るようなものが周りなかったから良かったものの……
こんな所に、もう住める訳がない。
「ごっ、ごっ、ごめんなさい!」
私が本気で怒っていることを漸く理解したのか、頭を地面にこすりつけて謝る彼。
確かこれは、東洋の謝罪方法【土下座】というものだ。本で見たことがある。
必死で許し請う彼から、少し視線を移す。
そこには発明に関するものと思われる大量の書類と、銀色の袋があった。
袋の中には、通帳や食料、衣類など生活に最低限必要なものが入っている。
地震や火事などの災害用にまとめたものだが、まさかこんなことに使うとは思わなかった。
「もう限界です。師匠、貴方も働いて下さい」
「え、いや、無理無理! どこも私を雇ってくれないんだもの」
顔を上げて拒否する師匠を、踏みつけてやりたくなるがなんとか抑える。
「そりゃあ、本名を名乗らない奴が、職に就けるわけがないでしょうね」
この男は自分の名前に相当コンプレックスを抱いているのか、人にはけして名前を明かさない。
弟子であるはずの私ですら、知らないのだ。
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