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「今回の家の修理費は御自分で稼いで下さい。それまで研究は自粛すること、いいですね?」
「そ、そんな……」
えー、とか、あー、とか、意味のない呻き声を出しながら頭を抱える彼に、そっと溜め息をつく。
名前を名乗るくらい、簡単なことだと思うのだが。実は脱獄犯だ、という訳でもないだろうし。
「とりあえず、今後どうするか決めなくては――」
「ああっ! 忘れてた!」
突然、奇声を上げたかと思うと、彼はポケットに手を入れ、折れ曲がった封筒を取り出した。
「今朝、仕事の依頼が来てたんだよ。グランから」
グランさんというのは、世界で一、二を争う程のお金持ちなのに、貧乏な師匠の友人という不思議な人だ。
この家“だった”ものを師匠に与えたのも彼だし、研究費の一部を援助しているのも彼。師匠のスポンサー的存在だ。
「彼、学校の理事長をしていてね。私に教師をして欲しいんだって」
教師なら、師匠にぴったりだろう。
彼の授業は飽きないし、上手い。
「しかも、ルナの入学手続きもしてくれるって」
「……私の入学、ですか?」
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