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予想外の言葉に思わず聞き返すと、師匠は笑顔で頷いた。
「でも、学費も、住む場所もないですし」
「学費はグランが全部払ってくれるって。学校は全寮制だから住む場所もあるよ」
話が上手すぎるが、グランさんが嘘をつくとは到底思えない。
何度か会ったことがあるが、怖そうな見た目に反してとても優しい人だったと記憶している。
「……断る理由が見つかりませんね」
丁度、本格的に魔術を習ったり、使い魔や武器を呼び出してみたいと思っていた所だ。
仕事をせずに、学問に集中出来る環境が得られるのは嬉しい。
「うん、それじゃあ決まりだねっ」
師匠は胸ポケットからペンを取り、封筒に何かをさらさらっと書いた。それに軽く息を吹きかけると、封筒が消える。
「今から行くって送っておいた。さ、行こうか」
彼にしては、珍しく段取りが良いと感心する。
もしかして、師匠はこうなることを予想して、わざと家を――いや、流石にそれはないか。
「ところで、何を作っていて爆発したんですか?」
変な考えを振り払うように、地面に這いつくばるようにして移動呪文を書く師匠に質問する。
すると彼は、笑顔のまま言った。
「掃除機だよ」
掃除機に爆発する要素があるのか、っていうか掃除機くらい家にあっただろうとか、ツッコミは山ほど思いつく。
だがとりあえず、私は師匠のそのふざけた笑顔を踏みつけることで、私の言葉にし難い思いを全て伝えた。
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