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「ここが、私立フランドル学園だよ」
移動呪文が発動する際の発光が収まると、先程までの焦げ臭さが失せていた。
辺りを見回すと、どうやら私達は少し広い部屋の中心に立っているようだ。
石の床に刻み込まれた移動呪文用の魔法陣を見るに、ここが外部からの来客を迎える場所なんだろうと思う。
「久しいな、我が友よ」
木製の扉が勢い良く開かれ、黒いヒゲをはやした大男が現れる。
鋭い眼光に、深く刻まれた眉間の皺。不機嫌なのかと勘違いされそうだが、これが彼――グラン・アーベルジュの素の表情なのだ。
「うん、久しぶり。元気だった?」
師匠がグランさんに駆け寄り、ニコッと無邪気に微笑む。
体格のいいグランさんの隣に師匠が立つと、師匠が如何にガリガリに痩せこけているかが、はっきりと分かった。
睡眠や食事の時間を削って、研究に打ち込んでいる為だろうが――掃除機にそこまで熱中出来るとは、呆れを通り越して感心する。
「ああ、元気だ。――ルナも、久しぶりだな」
「お久しぶりです」
軽く一礼すると、グランさんは口を歪めて小さく笑った。
「礼儀正しく、堂々としたその態度――うちの馬鹿にも見習いさせたいものだ」
「そうでもないよ、ルナは怒りっぽくて物凄く怖……いや、いい子だよ!」
私の視線に気づき、慌てて訂正する彼。
最早、師匠としての威厳なんてどこにも存在しない。
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