狼青年の虚実

6/8
前へ
/10ページ
次へ
 『連続殺人事件』、四ヶ月ほど前から日本を賑わしている事件だ。  ドラマ、映画では見慣れてしまってはいるが、今日日の日本を鑑みてみれば有り得ないことだろう。殺人事件の検挙率の詳細など寡聞にして知らない(むしろテレビで見た情報、ネットで得た情報が、果たして真実の情報なのか、判断が付かない)がここまで捕まらないとなると重大だ。だが、問題はそれだけではない。  殺人の動機、その多くが怨恨である日本で、こんな猟奇的な殺人事件が、しかも連続で生じるのは珍しい。……いや異常だ。  その犯人が未だに捕まらないことも含めて。  そして異常にして、奇妙で尋常でない点があと一つ。この連続殺人事件の犯人が死体の一部を持ち帰っているらしいという点である。  何故か。  それは評論家の間でも物議を醸しているらしい。  情報番組で見た限りでは、どの推論も専門家のそれらしい説得力があり、僕自身もなるほどと相槌を打っていた。  しかしながら、不束なことを言ってしまうが、いずれも的外れだったように思う。何というか故意に論点をずらしているように感じたし、結論はぼかされてるようだった。テレビ用にわざわざこしらえられたかのような推察ばかりだった。視聴者をとりあえず納得させ、番組を成り立たすための答えだったというか……。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加