時が止まった少年

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傘以外、誰も居なくなっていた。 家があり、金があり、寝床があり、生活に不便のないようなモノが残されていたが…傘以外の人間は居なくなった。 傘が書いたのは『命』だったから。 欲に溺れ、『物』に捕われ過ぎた人間の末路…それがこの世界。 そういう話だった。 『世界の枠を超えて悪事を働いた悪魔は親父が始末したけど…人は戻らず、傘はその時から時間が止まっちまったって訳だ。』 つまり、傘はこの世界で1人ぼっち。 俺が感じた雰囲気はコレだったんだ。永久の孤独…何もかけてやる言葉がねえ。 「今はボスがココに来てくれるし、昔程退屈はしてないよ。」 俺は甘かったのかもしれない。仕事が上手くいかないくらいで、騙されたくらいで… 傘が歌う声を聞きながら、俺は声を殺して泣いた。
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