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出発の日、三人は空港で落ち合った。三人ともいつものような柔らかい表情はなく、落ち着かない様子だった。
「おい花房。今からそんなんでどうする」
粕屋が花房を挑発するように話しかける。
「粕屋さんこそ」
「そうだぞ粕屋。お前の方が緊張してるじゃないか」
佐久間が粕屋の肩を叩きながら言う。
「そ、そんなことないぞ」
そう強がってみせたのも束の間だった。
「欧介大丈夫だよなぁ?なぁ?」
「落ち着けよ」
佐久間は言い寄ってくる粕屋を軽く振り払った。
「欧介~…」
「おい粕屋、ここ空港だぞ…もう」
突然声を上げて泣き出した三十代半ばにもなる男を佐久間と花房が必死になだめる。三年前と何も変わっていないようだ。
そこに若い女性の声がした。
「あれ?皆さんお揃いで、どちらまで?」
聞き慣れた声だった。三人が声の方向へ目をやると、客室乗務員の制服を身にまとった若葉の姿があった。
「やあ若葉ちゃん、久しぶり」
佐久間が微笑みながら挨拶する。佐久間に続き粕屋と花房も軽く挨拶を交わす。
「今日はちょっと、ニューヨークまで」
うつむき加減に佐久間が答えた。
「ニューヨーク?欧介さんと桜子さんに会いに行くんですか?」
「ああ、まあ…」
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