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2003年 東京
その日、佐久間の家に一通の手紙が届いた。
「あら、欧介君からね」
佐久間の妻・真理子は封を開け手紙を読んでみる。
「え、ちょっと大変」
真理子は慌てて佐久間を呼びに行った。
「ちょっとあなた?」
「どうした、そんなに慌てて」
まだ眠そうな目をこすりながら佐久間がやって来た。
「これ…」
真理子は佐久間に手紙を差し出した。
内容を確認した佐久間は神妙な面持ちに変わる。
「とりあえず、みんなにも話そう」
「そうね」
その夜、お馴染みのメンバーである粕屋と花房が佐久間の家にやって来た。あれから三年経った今でも、こうして皆で集まって飲むことが多い。
粕屋の交際相手であるなみもたまに同席することもあったが、今日はなみの姿はなかった。
「で、何なんだよ話って」
粕屋が佐久間に訪ねる。
佐久間の表情は暗い。
「良くないことなのは間違いないですね。まさか…佐久間さんたち離婚するとか?」
佐久間の表情から察したのか花房が問う。
「いや、俺たちのことじゃない」
下を向いたまま佐久間が返す。
「じゃあ、誰の?」
「欧介だ」
「欧介さんに、何かあったんですか?」
粕屋も花房も無意識に身を乗り出す。
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