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「日本に帰ってくるかもしれないんだ」
「いいじゃないか。何でそんなに深刻な顔をするんだ?」
三年ぶりに欧介に会える喜びに粕屋の表情は明るくなる。
「そうですよ。欧介さん全然帰ってきてなかったし、久しぶりにいいじゃないですか」
花房も嬉しそうな表情を見せた。
「そうじゃないんだ」
「え?」
粕屋と花房は声を揃える。
「俺たちに会いに帰ってくるんじゃないんだよ。あいつはまた、数学を諦めようとしている」
「何だって?!」
またまた粕屋と花房の声が揃う。かつて恋敵だったとは思えないほど息がピッタリだ。
「これが欧介からの手紙だ」
佐久間は二人に手紙を渡した。
「嘘だろ。最近まで順調にいってたんじゃなかったのか」
「俺もそう聞いていた。手紙にはあまり詳しく書かれていないし…どうする?まだすぐには帰ってこないし会いに行ってみるか?」
「俺は行くぞ!欧介のためだ!」
「俺も行きますよ」
「よし、そうと決まれば早い方がいいな。近いうちに休みを合わせよう。真理子、すまないが何日か留守にする」
「わかったわ。桜子さんのことも心配だし…ちゃんとケアしてあげてね」
「ああ」
こうして三人は欧介に会うため、ニューヨークへ向かうことになった。
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