第1話

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「日本に帰ってくるかもしれないんだ」 「いいじゃないか。何でそんなに深刻な顔をするんだ?」 三年ぶりに欧介に会える喜びに粕屋の表情は明るくなる。 「そうですよ。欧介さん全然帰ってきてなかったし、久しぶりにいいじゃないですか」 花房も嬉しそうな表情を見せた。 「そうじゃないんだ」 「え?」 粕屋と花房は声を揃える。 「俺たちに会いに帰ってくるんじゃないんだよ。あいつはまた、数学を諦めようとしている」 「何だって?!」 またまた粕屋と花房の声が揃う。かつて恋敵だったとは思えないほど息がピッタリだ。 「これが欧介からの手紙だ」 佐久間は二人に手紙を渡した。 「嘘だろ。最近まで順調にいってたんじゃなかったのか」 「俺もそう聞いていた。手紙にはあまり詳しく書かれていないし…どうする?まだすぐには帰ってこないし会いに行ってみるか?」 「俺は行くぞ!欧介のためだ!」 「俺も行きますよ」 「よし、そうと決まれば早い方がいいな。近いうちに休みを合わせよう。真理子、すまないが何日か留守にする」 「わかったわ。桜子さんのことも心配だし…ちゃんとケアしてあげてね」 「ああ」 こうして三人は欧介に会うため、ニューヨークへ向かうことになった。
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