一時の静寂

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冬の海は寒さで嫌になるが、夏も冬も潜水艦の中に居れば関係ない。 乗組員の体温と閉鎖的な空間が相乗効果を生み出し、艦内は常に蒸し暑い状態だ。 そんな暑苦しい艦内では、ベットに横になっても寝付けないことが多々ある。 「(潜水艦での勤務は、過酷な生活が待っていると聞いたが・・・)」 想像以上の過酷さに、フリッツは気が滅入っていた。 「電信員、敵国でも良いから音楽を受信できないか?」 「やってみます」 音楽のような大きな音を響かせる事は、自艦の位置を敵に知らせるようなものだが・・・。 周囲に敵が居なければ、音楽を聞いても問題は全く無い。 ザッザザザ 周波数を切り替える度に雑音が入り、やがて美しい音色が聞こえてきた。
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