それからの物語

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私は過去に一度、心を患ったことがある。   心の病、と診断されたその状態は、病気と偽った崩壊だった。そうあれは、心が壊れたのだ。   年によっては雪など降らないこの町は、今年も暖冬との予想だ。十二月の濁った空からは、雨の気配がしている。   私は足元へ視線を落とし、後悔にため息をこぼした。こんなことなら、白のヒールなど選ばなければ良かった、と。   クリスマスカラーに彩られた正面のビル、その中央の時計は、もうすぐ六時を指す。
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