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行き交う人々は、皆、どこか忙しなく、そこで立ち止まっている自分の姿が、滑稽に見えた。
あと、五分経って来なければ、帰ろう。
着いて三分と経たぬうちに、すでに気持ちは挫けそうだった。
今日、ここへ来るまでに何度も後悔をした。こんなことをしても無駄だ。それが分かっているからこそ、自分の行動に責任が持てなかった。
再び、時計を見上げた。
はぁ・・・・・・、と落とした何度目かのため息は、安堵の色を見せた。
「ごめん、森下さん」
人混みの向こうから大きく手を振る彼の姿が目に飛び込んできた。
ぎりぎり、彼の指定した時間に間に合った。
彼は、私の目の前で乱れた息を整えながら、満面の笑顔を向けた。
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