それからの物語

3/71
前へ
/71ページ
次へ
行き交う人々は、皆、どこか忙しなく、そこで立ち止まっている自分の姿が、滑稽に見えた。   あと、五分経って来なければ、帰ろう。   着いて三分と経たぬうちに、すでに気持ちは挫けそうだった。 今日、ここへ来るまでに何度も後悔をした。こんなことをしても無駄だ。それが分かっているからこそ、自分の行動に責任が持てなかった。   再び、時計を見上げた。 はぁ・・・・・・、と落とした何度目かのため息は、安堵の色を見せた。 「ごめん、森下さん」   人混みの向こうから大きく手を振る彼の姿が目に飛び込んできた。 ぎりぎり、彼の指定した時間に間に合った。 彼は、私の目の前で乱れた息を整えながら、満面の笑顔を向けた。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加