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「電車が遅れちゃってさ。駅から走ったよ。ごめんね、随分待った?」
「ううん、私も今来たところ」
彼を待っていたなんて、誤解されたくなかった。
そして、私は完全に引き返すタイミングを逃してしまった。
彼に連れて行かれた先は、駅から少し離れた路地の奥の小さな喫茶店だった。
彼がこんな場所を知っていたなんて意外だった。
席に着くや否や、「俺は、珈琲。森下さんは?」と彼はメニューも開かずに言った。
「同じので」と私は小さく返した。
きりきりと胸が痛み始めていた。
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