壱の編 修羅ふたり

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「この特攻服は、覇王の証明だ。この街を生きる男の覚悟の証」  覚悟の証、という意味は、それだけのアクションを起こす用意があるという意味。この特攻服を羽織って、街を駆け抜ければ、天に飛翔することさえ可能。大袈裟な言い方だが、それほどの意味を含んでいた。  その意味はここに集う誰もが理解すること。 「目障(めざわ)りなネズミだな……」  ただひとり、その辺をキョロキョロ見回すシュウを除いては……  そしてその呆れた行動は、他の者とすれば絶好の勝機に他ならない。シュウの首はこの街にすむ悪党なら、誰でも欲しがるところ、それを叩き潰せば一気に名声が広がる。 「魔王の首、俺が貰った!」  グッと踏み出すパンチパーマの男。その頭目掛けて木刀を振り落とした。 「誰が魔王だよ!」  すかさず吠えるシュウ。拳を大きく振りかぶり、パンチパーマの顎に叩き込んだ。  唾液を滴らせてパンチパーマが吹き飛ぶ。地響きと共に地面に落下した。 「ネズミも目障りだが、おめーらも目障りなんだよ。どうせここまで来たついでだ、メンドーだが、やってやんぜ」  既に体感温度は最高点まで達している。このまま話し合いで終わる筈もない。それはシュウならずとも、痛感せざる得ない。 「それが一番だろうな。それが男の証明でもある」  ゆっくりと拳をかざす松田。 「ナイトオペラの襲名披露、派手に開催しようぜ」  その声と共に男達が動き出した__
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