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「はっ、油断してたとはいえルーキーに負けちゃ、なんも言えねーわな」
そしてそれは、永瀬としても痛感するところ。共に学園の覇権獲りを目指してきた仲間ではあるが、こうも不甲斐ないとは思いもしなかった。
「しかしそれまでだぜ。俺はこいつらとは違うぞ」
言って転がる椅子を足で払い除ける。
「感謝しな、俺直々に相手してやるから」
そして大友の手前に立ちはだかった。倒れ込む男達がぐっと視線を集中させる。心なしか、辺りの温度が上昇した気がした。
「流石はオーク最後の硬派、永瀬晋作。バリバリした覇気じゃ、今までの相手とは違うのう」
須藤がごくりと唾を飲み込む。
「相沢とは違って、正統派で真っ直ぐに切り込んでくるタイプだったな?」
それに大友が訊ねた。
「そうじゃ。それこそがタイマン勝負では王道たる必勝パターン。なめとったら、泣きを見るのはこっちじゃぞ」
相手は仮にも学園の支配者を気取る武闘派だ。オーク学園正規軍と呼ばれる、唯一無二の存在。一瞬の油断さえ禁物だ、それはそく敗北に直結するから。
「永瀬を叩き潰すに策は要らねー。堂々と立ち向かうだけってか?」
それでも大友は余裕の表情だ。スカジャンを脱いで、後方に投げ捨てる。彼からすれば過去の栄光なんてどうでもいい問題だった。栄光や秩序なとぶち壊すもの、近年に置けるオークの歴史がそれを証明している。
「……どうしたルーキー共が、作戦会議は終わりか?そっちから仕掛けないなら、俺から行くぜ」
永瀬がじり足で歩み寄る。
「来いや永瀬。これで全部終いにしてやっからよ」
それを大友が体勢を構えて待ち受ける。
誰もが無言だ。息を押し殺してその動向を見守る。時を刻む時計の針の音と、ポタリポタリと蛇口から滴る水滴の音が響くのみ。
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