ルーキーズ結成

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 最初に動いたのは永瀬、ぐっと踏み込んで右のストレートを放つ。大友は後方に飛び退いてそれをかわす。  今度は永瀬、続けざまのハイキックを繰り出す。 「おっと、流石は永瀬。素早い動きだ」  しかしそれをも大友は見切っていた。両腕を手前にかざしてガード体勢を取る。 「見切ったからって、どうだってんだ!」  しかし永瀬は躊躇いもせず足に力を籠める。そしてガードもろともあっさりと弾き飛ばされた。 「なんだって?」  その表情が蒼白になる。身体ごと押し込まれて、壁に背中を強打した。想像以上に重い攻撃だ。その顔が苦痛に歪む、両腕に鈍い感覚が走った。 「がっ?」  今度は額を鷲掴みされて、そのまま後頭部を壁に叩き付けられる。瞼の裏でチカチカと赤い光が点滅する。 「単純な動きだな。中坊上がりはこれだからダメだ」  目の前にあるのは永瀬の顔。冷ややかな視線だ、最上級生としてのプライドがそこには感じ取れる。 「放せよ永瀬!」  堪らず右の拳を繰り出す。 「てめぇ、永瀬先輩だろうがよ!」  しかしそれをも永瀬は右手で絡め取る。そのままエルボーを顔面に穿たれて、数メートル吹き飛ばされる。倒れたテーブルに背を預けてへたれ込んだ。 「勘違いするなよルーキーが。俺は学園を仕切る男、永瀬晋作だぞ?」  抑揚なく響く永瀬の声。乱れた髪を撫で付けて、明王にも似た崇高さが窺える。  大友はなにも言い返さない。頭の奥がガンガンと痺れて思考が麻痺していた、少しばかり調子に乗ったことを悔いた。永瀬の強さは、彼の想像の遥か上にあった。
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