5115人が本棚に入れています
本棚に追加
/1495ページ
「いつまでグダ巻いてるんだ。マジでぶち殺すか?」
それに堪り兼ねたか永瀬が言った。後頭部を掻き上げて、煙草をくわえて火を点ける。
「確か吉沢だったよな。ルシファーズシード吉沢」
その視線が捉えるのはリーダーである吉沢。
「てめーはその大友と敵対してたんじゃねーのか?」
確かにその通りだ。吉沢と大友は敵対関係にあった、その二つの派閥が纏まるなど有り得なかった。何故ならそれぞれの目指す場所が違うから、互いの尊敬する人物が敵対関係にあったから。
ゆっくりと視線を向ける吉沢。
「確かに俺らは敵対関係にありましたよ。須藤なんかはともかくとして、この大友って奴は生きる世界が違う。誰にでも喧嘩を吹っ掛けるし、その手段さえ選ばない。大体にして俺は、この学園の支配なんか望んじゃいない。自分の守れる範囲、手の届く範囲だけ守れればそれでいい」
それが彼の理想だ。多くの仲間が慕って、そこそこの派閥を治める立場にはあるが、それ以上を求める気はなかった。ただ叶うことならば、あの"ステージの先"にある光景を見たかっただけだ。
「だったらどうして?」
「俺ら一年生なりの防衛本能っすよ。あいつが嫌いとか、理想がどうだとか、下手なプライドに固執して、潰されたら堪ったもんじゃないから。俺らまだ芽吹いたばかりの状態っすからね」
一年生という存在は、まだ芽吹いたばかりの若葉にすぎない。これから少しずつ成長して、やがて大樹となるべき存在。それまでは共存するのもありかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!