ルーキーズ結成

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「成る程な。俺達の強さにビビって、てめぇも趣旨替えしたって訳だ」  煙草の紫煙がたなびく、ゆっくりと歩み寄る永瀬。 「だがそれも残念」  しかしその態度はふてぶてしいもの。一年生同士が結束したというのに、少しも動じる様子は見せない。 「どういう意味っすか?」  それを真っ向から待ち受ける吉沢。こうして二人、至近距離で顔を向けて対峙する。 「既にゲームセットって意味だよ。お前らは袋のネズミ、纏めて始末されるしか道は残ってないのさ」  永瀬は口元に笑みを浮かべて卑下たように吉沢を見下ろしている。それは倒された三年生達も同じ状況だ。先程までと違って余裕の表情、口元に笑みを浮かべながらその台詞を訊いている。  暫しの沈黙。辺りに響くのは、カチコチという時計の針の音。時刻はもう少しで午後八時を指し示そうとしている。彼らが視線を向けるのはその時計の針だ。 「忠太と的場なら、ここには来ませんよ」  だがその吉沢の台詞で、彼らの表情から笑みが掻き消えた。訳が分からず、戸惑い吉沢を見つめる。 「そもそも他の連中がここに来れる筈はないんだ。何故ならここへの行き来は、俺らの優秀な仲間が規制してるから」  その吉沢の台詞で、三年生も理解した。会合の時間は八時きっかりだった。その時間になれば、他の幹部達も続々と集結する筈。しかし時間にルーズな連中は別として、多くの仲間が集まる様子はなかった。  とはいえ時間に頼る程、彼らも馬鹿ではない。この予測不能の事態に直面して、密かに電話連絡して応援も要請していた。  しかしいつまで経ってもそれは現れない。つまり誰かがそれを阻止していたということだろう。 「それに残念だけど、忠太は俺達を裏切った罰で成敗している。ついでに的場も叩き潰した。つまりあんたを倒せば、全てはお終いってこと」  全てはこの一年生達の想定の範囲だ。優秀な幹部を潰されて、外部からの援護も阻止された。云わば自分達がいるのは完全に檻の中。 「嘘だろ、的場はともかく大ウンコモラシまで……」  それを痛感して呆然と言い放つ永瀬。吉沢の台詞の真偽は現地点では分からない。しかしその二人の姿がここにないのは確かなこと。はめ込んだパズルのピースが、音を発てて崩れていくのを感じた。
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