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「流石だな、それでこそ我らがリーダー」
その肩を大友がポンと叩く。
「終わったな。しかし、ルーキーズってなんなんや?」
その様子を須藤が怪訝そう見据えている。
「あはは、咄嗟に口走っただけじゃんよ」
吉沢が答えた。その脳裏に浮かぶのは、信頼する先輩との、かつてのやり取り。酷く熱かった雑踏の思い出だ。
「漫画の見すぎだな。まっ、中坊崩れの俺らにはお似合いだろうが。……それよか帰ぇんべよ。いつまでもここにいて他の奴等が来たら面倒だしな」
煙草を口にくわえてあっけらかんと言い放つ大友。ふぁーっと大あくびを欠いて室内から抜けていく。
「だな、帰るとするか」
「勝利の後こそ慎重さが大事じゃからな」
呼応して吉沢達も動き出した。
こうして三人、階段を上がり雑踏に姿を現した。
「終わったのかよ?」
見張りをしていた拓也が、しびれを切らしたように投げかける。
「もちろんだぜ、倒された仲間の“仇”は取った」
誇示するように手前で拳をかざす吉沢。
「顎がガタガタだぜ。次こそは大物食いしなきゃな」
相変わらず大友は大胆な様子だ。顎に手をあててボソリと呟く。
「大胆な言い回しじゃな。まさに世間知らずなルーキーじゃ」
呆れたように言い放つ須藤。
「なんだよ、ルーキーって?」
それを怪訝そうに見つめる拓也。
街中は普段通りの光景が広がっている。地下であった激しいバトルなど、少しも気にかけることなく。そしてそれは彼ら一年生達も同じだ。普段通り、気にする素振りも見せずに雑踏に身を進めた。
「あーあ、俺も暴れたかったな」
「大丈夫だって。オーク学園にいりゃあ争いのタネには事欠かないしよ」
「……学園対抗野球大会やろ?」
「本当だよな、馬鹿なこと考える先輩もいたもんだよ」
「この勢いで、三年を制覇しちまおうか?」
「勘弁しとけよかっちゃん。あまり深入りするのはヤバいじゃろ。特に二年生には気をつけることじゃ」
「だぜ、かっちゃん」
「……へいへい、自粛しますよ」
「ま、とにかく明日も学校だぜ」
やがて四人の姿は人混みに消えていった。
こうしてオーク学園の力の均衡の一角・永瀬晋作が早々と戦線離脱したのだった。
ルカの停学期間が解ける、一日前の出来事だった__
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