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「楽しそうですね、春菜さん」
そのやり取りを窺い、マリアが和やかな笑みを見せる。
「もう、大変なのよ。小学生、相手にしてるみたいで」
春菜が答えた。それでもその表情はまんざらでもない様子。太助を愛しいと感じる、母性愛の成せる業なのだろう。
「早く大人になれよ太助」
それを察してシュウが吐き捨てる。
「もう、シュウ!」
「ほら、それがガキなんだ」
「太助、口を尖らしちゃダメ」
「それが太助さんらしさですよ」
そして場が爆笑に包まれた。
「本当に美味しいですね。流石は春菜さん」
「でしょマリアちゃん。スカーレットのイチゴのタルトも美味しいけど、ここのモンブランも美味しいでしょ?」
「確かにウメーよ。しかもこうゆっくり食えるのが最高だ。……スカーレットは馬鹿な住人の住処になってっからな」
「あはは、最近は倶楽部のみんなも、落ち着いてきたけどね」
ここはいつも使っているスカーレットとは別の喫茶店だ。誘ったのは春菜、モンブランがお薦めらしい。
個々に仕切られたテーブル席に、オークの生徒の姿は皆無。一番奥の席に他校の生徒の姿があるぐらい。倶楽部住人と違って、いきなり襲ってくることはないだろう。
時刻は午後の四時を指し示そうとしている。淹れたてのコーヒーの匂いが辺りを包み込み、射し込む西陽に観葉植物の緑が鮮やかだ。
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