導かれし少年たち

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 激しい闘いは続いている。  血みどろで殴り合いをする一年生、それを応援する仲間達。それを取り囲んで高みの見物を決め込む三年生。われ関せずの二年生。闘う意思のない女子や雑魚は壁際で震えるだけ。  この非現実的空間を作り出したのは三年の永瀬晋作(ながせ しんさく)だ。髪をリーゼントに撫で付けた、口髭を蓄えた剣呑な雰囲気の男。 「ははは、今年も中々のルーキーが揃ったじゃねーか」  故に支配者気取りで、解説者張りに、二つ並んだリングの特等席に陣取っている。 「名簿の連中、まだ見つからんのか」  怪訝そうにこめかみを掻き、隣のオールバックに訊ねる。相沢(あいざわ)という、永瀬の参謀を務める男だ。 「まだ見つかってないのはこの連中さ」  そして相沢が指し示す名簿に、二人で視線を落とす。 「ヴァンプ高崎(たかさき)?」 「そいつは血を見ると"てんぱる"曲者だぜ。幸い今は、登校途中で他校の奴と乱闘騒ぎになってるようだが」 「却下だな。サツの厄介にならなきゃいいが。それじゃ"闘うアイドル……"女じゃねーか」 「女だが相当なるルーキーらしいぜ」 「却下だな。俺は女には優しい、硬派だからな。……えっと次は"仏のさとちん"……」 「そいつは無視しろ、葛城(かつらぎ)の後輩らしい」 「却下だな。あの狂犬に関わるのはなにかと面倒。……それじゃ"大友(おおとも)のかっちゃん"」 「目の前で闘っているじゃねーか」  その名簿に連なる名前、後々にこの物語のキーマンとなることを、今はまだ誰も知らない__
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