導かれし少年たち

7/27

5115人が本棚に入れています
本棚に追加
/1495ページ
 一方で居並ぶ教師達は場の凄惨さを知りながら、そ知らぬふりを決め込んでいる。 『校長、訓辞は短めで』『去年は長すぎて、生徒の怒りを買いましたからね』『祝電も省略で。早く終わらすのが賢明かと』『暇な時間が続くと、どうしても暴れだす子がいますからね』そんな風に淡々と打ち合わせをこなしている。  一見責任逃れの馬鹿げた状況に見えるが、実は賢い選択だ。何故ならこの状況は、一年前に比べたらだいぶマシだから。一般の生徒や教師を巻き込む、最悪の修羅場には至っていないから。  永瀬との契約通りなら『ルーキーのリーダー各を掌握して、きっちりしつける』筈だから。狂暴な蛇だって、頭をがっちりと掴んでいれば尻尾など怖くはない。現に所々で小競り合いが勃発しているが、それも些細なレベル。  とにかくこれ以上騒ぎが大きくならなければそれで良しとしていた。誰だって始まりのめでたき日に、人生のどん底には突き落とされたくないだろう。体育館中央に掲げられた『みんなで一緒に卒業式を迎えよう』とのスローガンは暗にその意味も含んでいる。去年は入学式しょっぱなから、乱闘騒ぎで退学者が続出した。流石にあれは学園側としても痛手だった。悪い評判が一気に流出するし、授業料収入も激減した。  どうせこのくだらない余興も、式の開始と共に終了する。スピーカーの電源が入れられて『これよりオーク学園、新入生入学式典を開催されます』との内容が流れるまでの辛抱。  それも永瀬との契約。時間にしてあと十数分。そんな思いで溢れていた__
/1495ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5115人が本棚に入れています
本棚に追加