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「……ここで踏ん張らなきゃ、全部おしまいだぜ」
不意に誰かが言った。ひどく冷静な響きだ。それに呼応して意識を集中させる。ぐっと身体に力を籠めて、倒れるのを踏みとどまる。
「お主の魂は、まだ燃えとるんじゃろう」
ごくりと唾を飲み込んだ。胸の奥の方に熱いなにかを感じる。
「魂が熱いっちゅうのは、まだやれる、っちゅう意思表示じゃ。その感情があれば、お主はまだ負けん」
金髪の傍らには知らない少年の姿があった。サングラスを掛け、ブラウンのフライトジャケットを羽織っている。日焼けした褐色の肌に筋肉質の小太りな体型。後方に撫で付けて逆立てた黒髪が印象的。
再び猫屋を睨む金髪。
「どうすればいい?」
何故だろう、その声を訊くと冷静になれる。素直にアドバイスを求める自分がいる。
小太りの口元に笑みが浮かぶ。
「先ずは相手のエモノを奪え。そこからが本当の勝負じゃ」
この荒野を生き抜く為に必要なのは、相手を倒す武器じゃない。熱い魂と、頼れる仲間。それがあれば百戦危うからず。
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