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「どうして泣いているんです?」
「……えっ?」
そのグレンの声ではっとした。慌てて目頭を擦った。いつの間にかその眼から大粒の涙が溢れていたのだ。涙などとうに捨てたと思っていた。もう流すまいと思っていた。祖母が死んだあの夏、嫌というほど泣いたから。
「何故だ、なんでだよ!」
拭ぐっても拭ぐっても、涙は溢れてくる。それとは裏腹に身体は動かない。
「そろそろ終わりにしましょうか」
抑揚なく言い放つグレン。それに足払いを仕掛けられてバランスを崩す、胸ぐらを掴まれて床に押し倒された。
「須藤!!」
必死に声を張り上げる蒼汰だが、須藤は既に呼吸も儘ならなかった。顔面蒼白でグレンを見据えるだけ。
その眼前、グレンは無言で右拳を振り上げる。
「……ばあちゃん」
覚悟を決めたかのように、瞼を閉じる。
「須藤ーーっ!!」
「千晶くーーん!」
幾多の怒号が響き渡る中、グレンが拳を振り落とした__
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