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その時、シュウの携帯電話が震えた。
「誰だ、てめぇ?」
携帯を懐から取り出して、渋々と通話し始めた。
その様子を一弥は神妙な面持ちで見つめている。さっと右手を振りかぶり、缶をごみ箱に投げ捨てた。ストンと音を発てて、それは成功した。
「……半分は本気だがな」
その台詞はシュウには聞き取れない。自販機に照らされて青白く染まる横顔。それでもその瞳に籠る輝きだけは健在だ。
「ああ……そうか……そうだな」
一方のシュウは携帯相手にポツリポツリと通話していた。その表情も青白く染まって秘めた思いは分からない。それでもいつもと違う真剣な面持ち。堪らぬ感情が込み上げた。
「……分かった。今から行くわ」
「どうした、エラく真面目な顔じゃん」
携帯を懐にしまうシュウに一弥が訊ねた。
「黙れ、俺様はいつでも真面目だ」
おもむろに歩み出すシュウ。
「ヤボ用が出来た。……帝王中学まで行ってくる」
いつしか窓の外は雨模様。ねっとりと包み込むようなしのつく雨だった__
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