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シトシトと雨が降り続いている。
人通りのない住宅街の一角に、シュウの出身中学である帝王中学はあった。
雨音だけが響くグランド、そこに黒い傘をかざしたシュウの姿があった。携帯電話を耳にあてがって、誰かと通話しながら歩いている。
「ああ、そうなんだ。……こんなこと、お前にしか頼めなくてな。……頼んだぜ」
そしてそれを懐にしまった。
「待たせたな」
ゆっくりと視線をあげる。
「すんません。シュウさん」
辺りには数機のライトが灯っている。それに照らされて何者かの姿が浮かぶ。それは蒼汰の姿。傘はさしていない、そぼ降る雨でずぶ濡れ状態。
「懐かしいな中学校は。俺は一年数ヶ月ぶりだ。蒼汰は数ヶ月ぶりか?」
淡々と投げかけるが蒼汰は答えない、ただ俯くのみ。
「今年で廃校らしいな。時代の流れってのはどうにもなんねーな」
帝王中学は今年で廃校が確定していた。もはや誰の訪れもなく、ひっそりと佇む学舎は、降り続く雨に包まれ寂しげに思えた。ザァザァとした雨の音だけが包み込んでいる。
「どうした、呼び出した訳を言えよ。仲間はどうした、てめーひとりか?」
再び蒼汰に視線を向けるシュウ。
「蒼汰!」
大声で呼びかけた。吐息がライトに照らされて白く煙る。
「訊いた。ルカに喧嘩をふっかけたらしいな」
その一言にピクリと身をもたげる蒼汰。
「あいつはつえーだろ? なんせあいつは、かみ……」
「なんでですか!」
そしてシュウの言葉を遮って言った。
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