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「そうなんでシか。モーリー殿は強いんでシな、シー」
「当然でしょグワンさん。俺の後輩にシュウってワルがいるんですがね、奴は俺の兵隊ですよ。あんなスジモノ、一発ですよ」
まさにクローズ気取り。調子に乗って俯く角度が若干上がった。
「ほほう。流石はモーリー殿。シー、関東のてっぺんを掴む気でシか?」
「当たり前ですよ。俺は人員を掌握して、てっぺん掴むんです」
更に調子づいて角度が上がる。気付けばその視線はやや上を向けている。
「…………」
そしてテンパった。目の前にジャージの若者がいたのだ。
ジャージは両手を吊革に預け、クチャクチャとガムを噛みながら冷ややかな視線を向けている。
「楽しそうな話してんじゃん。あんたらが関東のてっぺん掴むって? 俺らぁ一発で潰すって?」
嘲るように訊ねる。
「そ……それはですね……」
モーリーは両手を手前にかざし、必死に宥める。
「シー! シー! シー!」
グワンに至っては小刻みに何度も頭を下げていた。
「パンピーだろうがなんだろうがな、プロの陰口、堂々と喋んない方が身のためだぜ?」
それでもジャージの追い込みは止まらない。身を屈め顔を近付けながら、モーリーを威圧する。
「シー、モーリー殿。あなたの兵隊を、シー」
あまりの恐怖にグワンの思考回路が狂った。
「ですがっ、シュウはっ、うっ? ……お腹の調子が」
ヨロヨロ立ち上がるモーリー。内股で扉方向に歩み出す。
「シー、モーリー殿、大丈夫でシか?」
グワンも歩調を併せるようにその後を追った。
しかしそこは閉ざされた空間だ。降車待ちする人波に阻まれたまま、ジャージの鋭い視線に晒される。
「か、勘弁して下さい。わ……私はひ弱な体質なので」
追い詰められたモーリー。観念して必死に頭を下げる。
「シー、シー、シー……」
グワンは扉にへばり付き、ジャージとモーリーを交互に見据えるだけだ。
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