シュウ その愛の人生

2/12
5116人が本棚に入れています
本棚に追加
/1495ページ
「よぉ、これからゲーセンでもいかねぇ?」 「パチンコの方がいいべよ。駅前の店、今日新装だってよ」 「マジで?だけどあそこ、設定がわりいかんな」 「リヨーコ、今からデートでしょ?」 「うん。元町でショッピングするんだ」  放課後の教室内、ガヤガヤと生徒達の会話も弾む。 「しかし、琴音ちゃん。大胆発言だったよね」  太助が言った。 「だよね。ウチの男子達が騒いで、うやむやになっちゃったけどね」  真優も同意し頷く。 「……まったく、迷惑なんだよ」  それを訊き入り、シュウがうんざりそうに吐き捨てた。  こうして三人は帰り支度をして教室ドアに歩み出す。 「帰ろうマリアちゃん」  真優が振った。シュウと太助、それと真優とマリアは、こうして一緒に帰ることが多かった。  しかしマリアの返事はない。 「マリアちゃん?」 「……はい」  それでも真優の再度の声で、ハッとして席から立ち上がる。 「どうしたの? さっきから元気がないよね」 「そ、そんなことはありませんよ」 「そう。だったらいいんだけど」  どこかぎくしゃくした会話だ。流石のシュウも振り返りマリアを見つめた。 「どうした、風邪でもひいたか」 「いえ、大丈夫ですよ」  笑顔で答えるマリア。 「そうか、気をつけろよ。夏風邪は馬鹿がひくんだからよ」  多少の違和感は感じていた。それでも気にする程ではないと思った。 「そうだね。夏風邪は、シュウみたいなお馬鹿さんがひくのよね」 「だよね」  真優がつっ込み、太助が同意する。 「……お前らなぁ、いちいちツッ込むなよ」 「ウフフ」  呆れるシュウ、そして笑うマリア。  それがいつもの光景。何気ない、いつも通りのやり取り。  安堵からかホッとため息を漏らすシュウ。この世界は果てしなく広大で、凍りつくぐらい無情な荒野だ。特にシュウは、様々なトラブルに巻き込まれて幾多の敵と激闘を繰り広げる修羅な人生の持ち主。だからこそこれぐらいの息抜きもあっていい__
/1495ページ

最初のコメントを投稿しよう!