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外は相変わらずの雨模様だ。雨で白く煙る光景、全てが微睡みの中、静寂の中にある。だが視線を凝らせば理解する。人目を避けるように、数人の男達が配されていることを。それは葛城組々員、及び私服の刑事達だ。互いに相手の動向を探り、場合によっては己の使命を賭けて動き出しそうな狂気が窺える。嫌が応でもピリピリした緊張感が包み込んでいた。
葛城と英二は、ロビーに設えてあるソファーに並んで腰を下ろしていた。
目の前を通院患者、見舞いの客、看護婦などがいそいそと行き交う。診察の為に患者を呼び出すアナウンスが響いていた。
その連絡を受けたのは、一時間程前だった。『オヤジさんが倒れました!』との逼迫した英二からの連絡だった。
「大騒ぎだったんですよ。……若い奴らギャアギャアと慌てふためいて、救急車呼ぶつもりがサツに通報しちまったり。……たまたま御見えになってらした“オスカー”の美鈴ママが、店の娘総出で見舞いに来たりで」
膝の上で祈るように手をかざし、俯き加減に伝える英二。
「成る程。部屋内の女共や、辺りを探ってる警察共はそのせいか」
呆れたように吐き出す葛城。
「大目に見て下さいや。それだけ、みんなに信頼されてるんですよ。オヤジは情に篤い御方だから」
「……それで、どうなんだよ?」
「今は意識も取り戻し、気丈に振る舞っています。医者の先生も、暫く入院して安静にしてれば、問題ないだろうと……」
「……古傷だろ? ……頭ん中の爆弾が、悪さしてる」
英二の言葉を遮り、葛城が言い放った。
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