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愕然となり葛城を見つめる英二。
「……知ってましたか」
やがて虚ろに天を見上げた。
「オヤジは、貴神会の為に心血を注いで来ましたから。……数十年前にコメカミに喰らった“一発”……血管に絡み付いて今でもそのままですから」
「へっ、クソジジイだよ。……俺がガキの頃は、その傷痕見せて自慢してたくせによ。『こいつはワシの勲章 じゃ、会長に放たれた凶弾の盾になった』なんてな」
葛城の口元に笑みが浮かぶ。哀愁漂うような、淋しげな笑みだ。
そしてその思いは、英二の中にも染み入る。
「とにかく、頭ん中検査して、その結果が出んと、詳しくは分からんのです。そんなに気い落とさんで下さいや実子。大丈夫ですってオヤジは不死身ですから」
憂いを払うように葛城の背中を叩いた。
「ば……馬鹿野郎が。誰が気い落としとるじゃと? 俺は……」
困惑気味に立ち上がる葛城。気恥ずかしさを押し殺すように巻くし立てる。
「はっはっは、それでこそ坊ちゃんじゃ」
英二が笑った。
「ボケ! 英兄いハメおったな!」
和やかに笑う英二と、ムカつき加減に声を荒げる葛城。
他の人々が訝しく窺っているが、それでも二人は気にしない。血の繋がりはなくとも、二人は兄弟のような存在だから__
「組のこと、任せたぜ“若頭”。貴神会の定例会、近いんだろ?」
「ええ、任せて下さいや、坊ちゃん」
絆という繋がりで結ばれた、誰にも恥じることない関係だから__
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