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「学園といえば、シュウ、校内に貴様の右腕と呼ばれる男が現れたそうだな」
ルカの鋭い視線がシュウを捉える。
「“朝陽”か。気にすんな、昔の知り合いってだけだ」
「そうか、ただの知り合いか」
雨は降り続く。全ての輪郭を真っ白に染めて、全ての心を掻き消すように。
「だがシュウ、貴様の下らぬ宿命で、周りの女を不幸にだけはするなよ」
「んなこと、てめーに言われんでも分かってる。いい加減消えろ」
その様子を琴音は固唾を飲んで見つめていた。言葉こそぶっきらぼうな二人だが、その奥底に潜むものには痛々しさが感じ取れる。
もちろんその意味は理解出来ない。それぞれの思惑など、当人にしか分からぬことだから__
「ふん、行くぞ榊枝」
こうしてルカを乗せた高級車は消えていった。
「宿命か……」
シュウは、その姿が消え去るまでずっと睨みを利かしていた。横顔を琴音が覗き込むが、一向に気にしない。
「なに見てんだよ。それより風邪引くぞ、早く帰んぞ」
こうして二人、歩き出したのだ。
戦に赴くお膳立ては整った。それは幾多の出会いと決別、悲しみと狂気を繰り返して、確実に時を刻みだす。
戸惑いは出遅れを、後悔は敗北を意味する手段に過ぎないから。そんな個人の感情など、戦場にいってはなんの意味も成さないから。他人事と酔狂を気取れば、飲み込まれるのは自分だから。
シュウを除く四天王、既にスタンバイ状態だ__
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