壱の編 修羅ふたり

5/8
前へ
/1495ページ
次へ
「ナイス、シュウ」  茶髪が言った。バイクを低く踊らせて、残骸(スクラップ)と化した車体の間をすり抜けていく。 「グギャ」  再度響く黒髪の悲鳴。その額に、飛散したなにかがぶつかったようだ。仰け反った頭をゆっくり戻す。  それから察するに、ぶつかった物体は大したものではないようだ。くるくると弧を描いてこちらに飛んでくる。アウディのフロントガラスを叩き壊し、助手席シートに突き刺さる。  それにはゾッとした。先の尖った金属片だ。普通ならこんなものが当たったら、大怪我は必至だ。  一方の工藤は茫然とした様子。 「流石は元ナイトオペラリーダー。及び魔王シュウ」  それでもその口元に浮かぶのは笑み。 「それ以上てめーらの好きにはさせんぞ!」  白バイを疾駆させて黄砂煙る街並みに消えていった。  戸惑いつつその様子を眺める運転手。"ナイトオペラ"という名には聞き覚えがあった。この近辺を統べる武装チームだ。内部のリーダー争いで熾烈な抗争を繰り広げているらしい。  一方の"魔王"という名称にも聞き覚えがある。確か悪のカリスマ、街一番の悪党だと聞いている。とはいえ昔の話だ。いま現在は死んだとされているから__
/1495ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5114人が本棚に入れています
本棚に追加