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朝の光が射し込む廃屋、港湾沿いに建てられたその場所に先程の二人の姿があった。
「お前を後ろに乗せるとろくなことがないな」
「うるせー、生きてるだけ、ありがたいと思え」
「それは言えてる。工藤先輩は哀れだがな」
「俺様を怒らせた罰だ。鉄グズ抱いて永遠に寝とけ」
二人、背中合わせに立ち尽くしている。
目つきの鋭い黒髪は黒瀬修司、通称シュウ。
それよりやや背の高い茶髪は沖田一弥。共にオーク学園二年生だ。
工藤の追跡はなんとか凌いでいた。事故りそうになること数回、カーチェイスさながらの攻防を制してここまで辿り着いた。ちなみに交機の工藤はCBと共に壁に激突、全治数ヵ月は確定だろう。
辺りには機械油と埃の臭いが漂う。数十台のバイクが並べられていて大勢の男達の姿もある。その誰もがムカついた表情でシュウ達を取り囲んでいる。なかには苦痛に喘ぎ、地面に倒れ込む者の姿もある。
この日この古びた工廃工場で、近隣を統べる武装チーム"ナイトオペラ"のリーダー襲名が行われようとしていた。シュウ達はそれを阻止すべく襲撃にきていた。
「沖田さんよ、これはいったいどういうつもりだ?」
立ち構える男のひとりが言った。背の高い細身の男。長い黒髪のサイドを刈り上げ、後方で結わえている。サングラスを掛けて、黒いタンクトップに革パン姿。
その後ろの棚には、刺繍の施された黒い特攻服が飾られている。それを今から着込もうとしていたようだ。
この男こそが次期ナイトオペラリーダー。松田という悪党の世界では名の知れた男だ。
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