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「ちょっと、それはやり過ぎでしょ?」
しかしその重苦しい空気を、誰かの怒号が掻き消した。
「勝った負けたで、女の子をやり取りするなんて、いくらなんでもあんまりでしょ?」
それは原田真優。普段の彼女らしからぬ激しい剣幕だ。ルカを上目遣いで見据えて、狂おしい表情を見せていた。
それをルカは横目で聞き入る。
「確かにお前の申す通りだ」
そして再び女に視線を戻す。女は涙目になっていた。うっすらと赤らむ頬、こんな状況になっているのが信じられないようだ。
「勝った敗けたで、その身体を束縛するのは外道の所業」
淡々と響き渡るルカの台詞。
「……ナギサ……俺はお前が……」
それに呼応して、声にもならない声を張り上げる真田。彼女を取り戻そうと、床を這いずり必死に腕を伸ばす。
それでもルカは視線をくれない。
「だからこそ俺様が、貴様を解放してやるのだ」
女と視線を交わしたまま、意味深に言った。
女は無言だ。その瞳が徐々に輝きを帯びていく。
「ルカ様。本当に私を解放してくれるんですか? ……聖人くんと付き合わなくていいんですね」
やがて発した一言はそれだった。
それを聞き入り、真田の仲間達が虚しげな表情を見せる。『諦めろよ聖人。お前だって他人から奪ったんだろ』『本当はお前のこと、好みじゃなかったんだよ。所詮形だけだ』『お前なら、もっといい女がいるって』淡々と真田を諭している。
「ケッ、しょせん恋なんて奪い奪われ、略奪の繰り返しってか? だからメンドーなんだっての」
堪らず呟くシュウ。真田に関してはある噂を訊いたことがある。『好きな女が出来て、その彼氏を叩きのめして略奪した』噂ではあるが公然の事実だろう。つまり女からすれば恋愛感情はない、仕方なく付き合っているだけだ。
それを如実に表すように真田は『だって、好きだったんだもの』と悔しげに拗ねている。
一方でその様子を見つめる女達は酷く興奮した様子だ。『言葉だけでなく行動で彼女を解放するなんて、やっぱり素敵』『紳士なのよ、益々惚れちゃった』そんな風に絶賛の嵐。この女達、ルカがなにをやっても惹き込まれるようだ。
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