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「えっ?」
「なに奴だ?」
シュウとルカ、背筋に冷たい感覚を覚えて反射的にその場から飛び退く。朧気になる視界、いつの間にか辺りに霧が立ち込めていた。
マリアの背後には別の人物が現れていた。それは身長二メートルは越す、カマキリのような長身の男。ボサボサに伸びた黒髪だ。その間から片方だけのくぼんだような目が見えている。
「宅ちゃん、あんた何故ここに?」
愕然と言い放つシュウ。この男、その名を"宅ちゃん"。本名は非公開。年齢は二十二歳で倶楽部での会員ナンバーはNo.1。つまり会長を務めている。通称、学園の生ける鬼神。
「ここ、オイラのクラスなんだな」
宅ちゃんはあっさりと答えた。
「ウソ。あんた、また落第したのかよ? しかも同じクラスだなんて」
それで誰もが察した。彼はまた落第したのだと。
彼の崇拝者の伝説によれば、宅ちゃんが落第するのは自らの意志だそうだ。学園に好みのカワイイ女が現れると、その為だけに学園に居座る。……つまり馬鹿だ。
しかも異様に目立つ存在なのに昼間は隠れてるし、冬になると冬眠するから、その姿を見ること事態が珍しい。だったら学生なんかやるな! そう突っ込みたくもなるもの。
「宅ちゃん様!」
「我らが教祖様、その鳴神とシュウに天罰を」
それでも彼が学園に居残るのはこのファン倶楽部の住人の為。それだけ慕われている。
その時教室中央部の机から、黒い小猿が走り出してきて、宅ちゃんの肩に飛び乗った。
「おう猿飛。元気だったかい?」
宅ちゃんが話しかけた。
「大丈夫ですぞ、宅ちゃん様。猿飛様は元気でした」
「猿飛も、同じクラスなんですぜ」
ファン倶楽部の面々が言い放った。
因みに紹介しておこう。この小猿の猿飛は、れっきとしたオーク学園の生徒だ。
どうして猿なのに生徒なのかって? ……詳しいことはファン倶楽部、注意事項第三項目に記載されている。猿飛はシュウ達のクラスメートであり、ファン倶楽部の元幹部。宅ちゃんとも肩を並べる、偉大なる人物だ。
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