参の編 夢幻の如くなり

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 普段の大具足虫ならば、猫屋会など簡単に返り討ち出来た筈だ。だが彼らは、飼い主たる大友のかっちゃんの命令で、敵対する派閥を討伐した帰り際だった。ダメージも蓄積していたし、なにより極度に腹ペコだった。故に両者の戦いは、『ニャーニャー』『黙るのだ、おらは腹ペコだ』『フギャー!』『……そこは止めてよ』と、大方の予想を狂わせて激しいものとなる。  それでも大具足虫の強さは比類なきものだった。アバラを数本折られ、左肩を脱臼して、配下を数人病院送りにされて、山盛りのウンコを漏らし、それでも辛勝した。  勝つには勝った。だがそれで良かったのだろうか? 彼らの学年には、まだ多くの敵が存在している。チームルシファーズシード、金髪と小太りのゴールデンコンビ、そして仲間とはいえ自分を利用している大友のカッちゃん。自分達がこんな状態では、誰かに飲み込まれ、深い闇に沈んでいく恐れさえあった。  そして彼は、そこで悪魔の囁きを訊いたのだ。『ニャッたら上級生に、一年生のてっぺんとしての地位を、認めて貰えばいいじゃニャーか』地面にひれ伏す、猫屋兄の不用意な一言だ。それで事態は思わぬ方向に動き出す__
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