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「座っていいの?」
もちろんいいですよ。
彼女に僕の声が聞こえる訳は無いが、彼女は壊れ物を触るように優しく触れ、ゆっくりと僕に腰かけた。
彼女の体重は軽く、それでも僕は少しでも彼女に不安を与えないよう、四つの足で踏ん張った。
彼女の側にいた大人が彼女に何かを言う。彼女は「気にいった」と笑ってそれに答えた。
「ありがとうパパっ」
彼女は一番近くにいた『パパ』に笑顔で言う。
「よろしくね」
今の『よろしく』も『パパ』にだろうか?
――いや、きっと僕にだ。
嬉しい。僕を気に入ってくれた。きっと彼女は僕を大切にしてくれる。
よろしくと僕は言われたのだ。返事は必要だ。
聞こえないだろうけど、僕は『心』というものの底から言った。
これからよろしくね。
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