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雨は相変わらず降り続いていた。
ぐっしょり濡れた髪も服も、今のユータにはなんの支障もなかった。
背中を悪寒が這いずり回っている。
「殺せ」
もう一度静かに兵士は告げた。
「いや・・・・もぅ勝負はついたんだし・・・」
ゴモゴモとユータは言う。首を振りひきつった笑みを浮かべて
「なめるな小僧!!」
そんなユータに唾を撒き散らしながら、兵士は怒鳴った。
ビリビリとした兵士から放たれた覇気に、ユータはさらに顔をひきつらせ、一歩後ずさる。
「俺に生き恥をさらせというのか!!」
ユータは何も言わなかった。いや、言えなかった。
(兵士って奴らはこういうもんなんだ。負けたら死にたいと願い、自分のプライドを守ろうとする)
ジェイガンは悲しそうに言った。
(死んだら何にもできないんだと・・・・何故わからないんだ・・・・)
「ジェイガン・・・」
ジェイガンの声が胸にこだまする。握りしめているはずの剣がやけに軽く感じた。
「どうした小僧!!俺を侮辱するんだな!!…ふん。なら覚えておけ。貴様のその優しさが・・・・・戦場では命取りになるのだ!!」
一瞬の隙だった。
ジェイガンに気をとられていたユータ。
その隙に素早い動きで兵士が無傷の左腕でユータの足をなぎはらった。
足に走る激痛。
ユータの体は浮き上がり、ぬかるんだ地面に横面からすっころんだ。
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