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「今日は何にしようかな?母さんはキノコが好きだから、キノコでも取って行こうかな」
一人、今日の夜飯を考えながら森の奥へ入って行く。
何度も歩いた歩きなれた道。モンスターも少なく、生い茂る木々の間から僅かに覗く光が優しくて好きな道。
「あ!あった。これなら食べられそうだ」
鼻歌混じりに道を抜けてやがて、キノコの沢山生えた場所にたどり着いた青年は片っ端からキノコをつぎとりはじめた。
いつもと変わらない時間。早く摘み取って帰ろう。
そんな事を考えつつ青年が次のキノコに手を伸ばしたそんな時だった。
バヂッ――――
「ん?」
僅かな音がした。何かが爆ぜるような音。
「…気のせいかな?」
耳をすますが何も聞こえない。空耳かと再びキノコに手を伸ばすと…
バヂッバヂッ――
「気のせい…じゃない!」
さっきよりも大きな音が確かに聞こえてきた。辺りを見渡し耳をすませる。ざわざわと風が悪戯に木々を揺らして音をたてた。
(……れ……か)
最初は木の葉の擦れる音だと思った。だが…
「…?」
(誰か…いるのか?)
今度ははっきりと耳に響いてきた。
「誰!?」
近くには誰もいないハズ…なのにまるで頭の中に直接話かけられているような感覚が青年を襲う
(我はここだ…)
「…呼んでる?」
不思議と恐怖感はなかった。
それどころか声に呼ばれているような気がして…引き寄せられるように歩いて行くと、やがて岩壁にポッカリと空いた小さな洞窟を見つけた。
「あれ?こんな所あったっけ?」
1人呟くも返事はないので青年は、一度躊躇ってから洞窟に足を踏み入れた。
洞窟に入ったとたん、じめじめした空気が顔に纏わりついてきた。だが、すぐに中から吹き抜けてきた風がじめじめをさらって行く何とも不思議な洞窟。
この先に何があるのだろう…
不思議な好奇心に駆られてどんどん奥へ進み、だいぶ行った所でようやく足を止めた。
広い場所だった。ドーム状に広がる場所で天井は円上に開いていて、光が射し込んでいる。
青年が天井から射し込むその光を追って視線を下げていくと、ふと動きが止まった。
「あれは…剣?」
天井から射し込む光に照らし出されていたのは、見たことのない形の剣だった
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