第一章 望まれなかった英雄

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鹿嶋「まあ、常人ならまず耐えられない。 だから、自分を守るために、理性をトバす。理性をトバして、考える事をやめ、おおよそ全ての生き物の根底にある、一つの本能に従って行動するようになる。 まぁ、所謂食欲だ。 そして、暴走して食欲に支配された鬼人を“食人鬼”と呼ぶ」 食人鬼に成ったら終わりだ、と先生は言う。 鹿嶋「食人鬼に成ったら終わりなんだ。人も鬼も。 ただただ、食欲のままに殺して喰う。 そこに、男だとか女だとか、大人だとか子供だとか、人だとか鬼だとかは、一切ない。 ただ殺し、ただ喰う。その行為には、人の意志も鬼の意志もない。あるのは、本能だけだ。  そして、食人鬼になってしまうと、二度と元には戻れない。  だから、鬼人に成れた人と鬼の多くの最初の仕事は、食人鬼となってしまった同胞を殺す事だったんだ」 例えば、そう、例えば、食人鬼に成ってしまった尊史や綾音を、他の人を守る為だと言って、殺す事が、俺には出来るだろうか? きっと、出来ない。 そんな事はない、と知っていながらも、もしかしたら元に戻れるかもしれないと、希望を捨てられないだろう。
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