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鹿嶋「まあ、そんな事もあって人も鬼も、特に人の方が、あまり契りを交わしたがらなかった。
なんせ、元々は鬼同士の争いだ。人間が介入しても、得られるメリットは少ない」
そこで、一つ疑問が生まれた。
千駿「先生、一ついいですか?」
鹿嶋「いいぞ。なんだ、里見」
千駿「どうして、メリットが少ないんですか?
鬼は人を喰うんだから、角無しの鬼と協力して、鬼の数を減らせるなら、それは人とってのメリットじゃないんですか?」
俺の質問に、先生は満足そうな顔をする。
鹿嶋「いい質問だ、里見。ただ、お前は一つ勘違いをしている」
千駿「勘違い、ですか?」
鹿嶋「そう、勘違いだ。
お前は、鬼は人を喰うと言ったが、正しくは人“を”喰うんじゃなくて人“も”喰うんだ」
人を喰う、じゃなくて人も喰う?
いったいどういう事だろう?
鹿嶋「わからない、って顔をしてるな。
まあそうだろう。
いいか?この時代の人にとって、本来鬼は敵ではなく、災害のようなものだったんだ。
確かに鬼は人を喰うが、鬼が人里に下りてきて人を襲う、といった事件は、そんなに起こってはいないんだ。下手をすれば、鬼に殺された人よりも、疫病や火災で死んでしまった人の方が、はるかに多いくらいだ。
しかも、鬼を倒す為に背負うデメリット、食人鬼の方が鬼よりも、よっぽど人にとっての脅威だったんだ。
そんなデメリットを負ってまで、角無しに協力する義理は人にはなかった。ある事件が起こるまではな」
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