第一章 望まれなかった英雄

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言葉を切ると、先生は黒板に大きく“百鬼夜行”と書いた。 鹿嶋「百鬼夜行。角無しと人が協力する事を恐れた、鬼達による人の大虐殺だ。  しかし、鬼達の目論みは外れ、この事件をきっかけ、人は角無しと協力して、鬼の討伐を始める。  角無しの反逆に過ぎなかったこの戦争に、人が介入した瞬間だ」 先生は眼鏡のずれを直すと、一息ついた。 鹿嶋「まあ、後は知っての通り、数の問題を乗り越えた人鬼達の活躍によって、鬼は敗北する。  この辺面白い話が沢山あるが、時間がないので割愛させてもらう。  手抜きとか言うな。本当はここが一番面白いんだぞ!  角無し一族の姫、鈴鹿御前と白金の悪鬼の一騎打討ちや、吉野の決戦なんかは、丸一日掛けても語り尽くせないくらいだ」 だがな、と先生が時計を見る。 鹿嶋「後10分しかないんだ、駆け足で大戦のその後に行くぞ」 黒板の字を消して、二つの円を書く。 鹿嶋「いいか。大戦の敗者となった角有りの鬼達は、その棲家を追われ、人の監視下での生活を強要され、さらに人を喰う事も完全に禁止された。  そして、この鬼達を監視する為に、角無しと協力して組織されたのが、人鬼警察『鎌倉府』だ」 円のひとつに、鎌倉府と書き込む。 鹿嶋「しかし人の中には、それを良しとしない人々がいた。  鬼はそのすべてが邪悪なものである、共存するのはやぶさかではないが、その管理は全て人の手によって行うべきである。と言う思想の下に、角無しすら悪とみなし、人の身のみで鬼を監視、また悪事を働く鬼を粛清する事を目的とする組織『金剛不二』通称『御山』は、そんな人々の集まりだ」 そして、もうひとつの円に御山と書き込む。 鹿嶋「この、鎌倉府と御山はその性質の違いから、度々対立するんだが、まあこれは今の鎌倉府と御山を見てればわかる事だな」
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