Prologue

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かつてその場所には、街があった。 建物があり、道があり、線路があり、人々の営みが、そこにはあった。 今は、土色の大地がその姿を現にし、燃え盛る炎が、空を赤く染めるだけである。 そこは、地獄と呼ぶのに相応しかった。 生物は等しく息絶え、終わりを迎えている。 天を覆うかのように建ち並んだ建物はすべて倒壊し、その痕跡すら残っていない。 そんな世界に、それはいた。 ―白い鬼 かつての街の中心でただひとつ、悠然と佇むそれは、まさにそう形容するに相応しい容姿をしていた。 白い鬼「………」 それは、厄災であった。 曰く、終わりの象徴 曰く、破壊の化身 曰く、死を振り撒く者 曰く、白い魔王 それには、様々な呼び方が存在したが、多くの人々は畏れを込めてそれを、こう呼んだ ―白面 と。 約3年前に現れた白面が、この国―日本の約半分を焦土にするのに、さほど時間は掛からなかった。 当然、人々も抵抗した。 ある時は、一個大隊を ある時は、戦車隊を ある時は、白面と同じ、鬼の戦士を そしてある時は、核弾頭を持ってして、この人類史上最悪の厄災に抵抗したが、そのすべてが、無駄だった。 一個大隊は、骨も残らず 戦車隊は、一塊の鉄塊にされ 鬼の戦士は、バラバラになり 核弾頭は、消滅した それほどまでに、この白面の力は圧倒的であった。 そして、人々は悟った。 白面によってもたらされる、この世の終わりを
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