星月夜に君を想うこと

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『で、でも…ほんとにもうぐちゃぐちゃで、どう頑張っても無理なんです……』 胸がドキドキして、上手く口が回らない。 何せ耳のすぐ横にかがんだ先生の顔があるのだ。 息遣いまで聞こえてきた矢先には、頭がくらくらして今にも倒れてしまいそうだった。 『安心しなさい。先生はルービックキューブとか知恵の輪が大の得意なんだ。すぐにほどいてあげるから』 さも自信あり気に、だから大丈夫なのだと言い切る先生の言葉に、思わず噴き出してしまう。 『ぷ…っっ』 『あ、信じてないな?嘘じゃないぞ、本当に先生は…』 必死になって弁解しようとする先生の姿が、まるで同年代の男の子のようで、いつも、大人の男の人としてしか見ていなかった先生の、新しい部分をみつけたような気がして…胸のあたりがこそばゆかった。 『だって先生、いくら知恵の輪が得意だからって、髪の毛とそれとは違うと思うんですけど……』 『あ、言ったな?』 プライドを傷付けてしまったのか、むっとした先生の顔がこちらに迫ってきた。 背の高い先生が、私を覗き込むようにして向かい合わせになれば、その距離はそれこそ、恋人同士であるならば、キスする寸前の甘い距離にまで縮んでいた。 そんなに近くては、私の顔が赤いのが、夕日のせいだけじゃないって、ばれてしまうのではないかと焦る。 思わずぎゅっと目をつむった。
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